【舘野鴻(たてのひろし)さん】の自然を観察したくなる絵本

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絵本には自然をじっくり観察されて描かれているものも多いですね。

自然に焦点を当てた絵本は、身近で流れすぎてしまう小さな出来事に気づかせてくれるものだなと感じます。

その中でも私が特に好きな作家さんが、舘野鴻(たてのひろし)さんです。

ご本人が絵も文も書かれているものと、文のみで絵はコラボされているものがありますが、今回はたてのひろしさんのみの絵本をご紹介します。

最初の出会いは『うんこ虫を追え』という何とも面白いタイトルの絵本でした。

絵が素晴らしいのはもちろんですが、観察して試行錯誤している過程とそれをユーモラスに楽しまれている様子が描かれていて面白くハマりました。

目次

すずめばち(福音館の単行本)

1冊目は羽音が聞こえてきそうな躍動感あふれる「きいろすずめばち」が表紙の絵本。

すずめばち

著:舘野 鴻
出版社:福音館書店
すずめばち

思わず逃げたくなってしまう人もいるのではないでしょうか。

こどもねこ

こ、こわいよー

絵本は寒さが緩んできた春に、1匹の女王蜂が目覚めるところから始まります。

最初は1匹だけでしたが、女王がせっせと卵を産んで、産んで、産んで…と、どんどん家族を増やしていきます。

幼虫のご飯を捕まえにいったり、もっと大きなオオスズメバチに襲われ戦うシーンもあります。

そんな苦難を乗り越え、次の女王を育てた後、女王はつぶやきます「みんな…」

眠りねこ

思わず、ほろりとなりました
このページが一番好きです

子育てして、いつかは巣立っていくであろう子供たちとの別れを想像し、残される寂しさを感じる世代交代のシーンに思わず胸が締め付けられました。

この絵本を読んだ後、夏の登園散歩中に、アシナガバチが丸々した緑のイモムシを捕まえて飛んでいくところを子どもと見かけました。ハチも子育て中なのでしょう。

こどもねこ

むし、はこんでるよ!

眠りねこ

幼虫にご飯を運んでるんだねぇ

ある冬の寒い日、近くの公園で見つけた巣。
もう蜂は見当たりません。

蜂の出入り口も確認できます
眠りねこ

巣があるよ~
もしかしたらひっそりと女王がいるかも知れないね!

こどもねこ

「す」ほしい!!

「うーん、冬だから蜂もいないだろうけど公園の樹だしなぁ」と思っていたら、後日枝が選定されていて、巣はなくなっていました、ちょっと残念。

蜂は針の怖さはありますが、その一生懸命に生きる生態を知ったことで同じ生き物として身近に感じられるようになりました。

ぜひ実際に、お話を読んでみてくださいね。

どんぐり

こちらは精緻な絵が美しい、文字がない絵本です。

どんぐり

著、イラスト:たてのひろし
出版社:小峰書店
どんぐり

森の中で無数のどんぐりが木の上から落ちてきます。

地面に転がるたくさんのどんぐり。

このどんぐりがすべて木になるわけではありません。
代わる代わる動物や虫などがやってきて、どんぐりを食べていきます。

森の生き物の大事な食料になっているのがわかります。

同じ場面が少しづつ変わっていくので、細かな違いを感じ取るように読みたい絵本です。

文字がない分、心ゆくまでページを眺められます。

静かに、でも確実に変化していく自然を、お子さんと一緒にじっくり観察してみて下さい。

うんこ虫を追え(たくさんのふしぎ傑作集)

美しい色彩の昆虫が表紙を飾っていますが、よく見ると…え、うんこ虫?

うんこ虫を追え(たくさんのふしぎ傑作集)

文・絵:舘野 鴻
出版社:福音館書店
うんこ虫を追え(たくさんのふしぎ傑作集)

この絵本の主人公は『オオセンチコガネ』という虫です。

光を反射して輝く、美しい甲虫ですが、食べ物が「うんこ」というと、ちょっと引いてしまう方もいるかも知れません。

しかし、著者の舘野先生はそんなオオセンチコガネに光を当て、生態の謎を探求してその研究過程を絵本にしています。

文字数が多めで少し大きめのお子さん向きと思われる方もいるしれませんが、豊富な絵とくすりと笑える文で描かれていて、年中さんくらいでも楽しんで聴いていました。

「うんこだ~♫」と飛んでくる虫の様子もかわいく、子どもも大笑い。

こどもねこ

「うんこだ~♫」 よんで!!

一方で、卵を無事に生み育てるために深い穴を一生懸命に掘るお母さんコガネの手はボロボロに…
その健気な様子に心を打たれます。

そんな絵本にあちこち楽しい仕掛けがあります。
実は表紙にも!

周囲に白黒で描かれている植物の名前、ご存知ですか?
フェンスなどに絡みついているのをよく見かけます。

『ヘクソカズラ』と何とも可哀想な名前の植物、臭いにおいを放つのでオオセンチコガネを飾るにふさわしいと抜擢されたのでしょう。

実は最初気がついていなくて、絵本美術館の学芸員さんに教えていただきました。
細かいところに遊び心があって、どこを読んでも楽しいです。

おまけ①:昆虫MANIAC(マニアック)展

以前この絵本の原画や、研究のために作ったものを見る機会があったので行ってきました。

巨大なオオセンチコガネが空を舞う

絵本にも出てきた『オオセンチタワー』も展示してあり、こんなに大きいんだと感動でした。

実物を見るとその大きさに驚きます!

本物のオオセンチコガネもいましたよ。

こちらは2024年に東京・上野の科学博物館で行われていたものを見に行きましたが、現在も各地を巡回しています。

絵本を読んで、ぜひお近くの会場に足を運んで見てくださいね。
(2026年1月現在は名古屋のようです)
参考:昆虫マニアック展

おまけ②:映画「うんこと死体の復権」

こちらの映画の一部でも、作者のたてのひろしさんの創作活動の様子が描かれていました。

映画のチラシ(左)パンフレット(右)

罠を仕掛けて虫を集めたり、観察して絵を描く様子など、動く作家さんを見る貴重な機会になりました。

こういう虫や微生物がいてくれることで、体から出た時点では排泄物だったものが『土・栄養』に還るんだと感じられました。

ある一定の秩序を形作る生き物が、死ぬと無秩序になりバラけて大きな循環に戻る。

この虫たちも人間も全て、自然の大きな循環の一部なんだなと改めて思います。

つちはんみょう

美しい精密画『しでむし』でデビューした舘野さんの、昆虫の精密画絵本の中から1冊。

つちはんみょう

著・イラスト:舘野鴻
出版社:偕成社
つちはんみょう

小さな虫「つちはんみょう」に焦点を当てた絵本です。

丹念な研究・観察の後に絵本にされたそう。

私も知らない虫でしたが、ひめはなばちという別の昆虫に依存して成虫になるという生態で、こんな確率の低い賭けをくぐり抜けて残ったものだけが成虫になるんだと驚きました。

4000個の卵から孵った幼虫たちは、草花に登り、そこにやってきた色んな昆虫にしがみついて乗り換えて運ばれていきます。(途中の乗り換えは舘野さんの想像も混ざっているそうです)

最後、目的とするひめはなばちにたどりつけるのはわずか…

写真では黒っぽく見える虫ですが、絵では光が当たると輝く瑠璃色と細かな凹凸が丹念に描かれていて、虫めがね片手に読んでも楽しめます。

こちらもおすすめ:ファーブル昆虫記 (ビジュアル特別版)

舘野先生が師事した画家、熊田千佳慕先生が絵を描かれた本で、初版1969、新装版2001年に刊行されたものを読み物として復刻したものだそうです。その際に舘野先生が装画や寄稿をされた本です。

文:古川 晴男
原作:ジャン=アンリ・ファーブル
絵:熊田 千佳慕
装画:舘野 鴻
ファーブル昆虫記 (ビジュアル特別版)

昆虫や自然の不思議に興味を持ち始めたお子さんにおすすめです。

文字の多い本はまだ難しい小学校低学年の子どもでも、豊富な絵とふりがなで、虫の生態の不思議と研究の姿勢を学ぶことができます。

電子書籍のサブスク、KindleUnlimited対象なので、気軽に読めるのが嬉しいですね。

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舘野鴻先生の原画展と交流会

絵本を読むのも好きですが、チャンスが有れば原画展や交流会へも足を運んでいます。
舘野先生のものを発見して昨年行ってきました!

原画展

長野の安曇野の絵本美術館で原画展があると知って見に行きました。

長野・安積野 絵本美術館&コテージ森のおうち
(以前訪れた時の写真です)

最初にご紹介したすずめばちは、想像以上に大きな絵で驚きました。

他の絵本と違ってダイナミックな筆運び!と思っていたのですが、平塚市美術館で公開制作された作品で大きなキャンパスに下書き無し、ほぼ一発描きで描かれたものだと知り納得です。

2冊目にご紹介した『どんぐり』も精緻な鉛筆画で、じっくり眺めました。

現地のみで見られる限定公開動画もあり、これはこれで1場面の中で小さな変化が起こるのを体感できます。

こちらの美術館はすぐ横のコテージで宿泊もでき、原画展を見に行った際に子どもと宿泊しました。

宿泊者には美術館内の図書室の絵本が借りられるので、夜子どもにゆっくり読みきかせすることもできます。

いつもは絵本ですが、今回はたくさんあった紙芝居をリクエストされました

定期的に原画展や作家さんとの交流会もあるようなので、ぜひチェックしてみてください。

参考:長野・安積野 絵本美術館&コテージ森のおうち

交流会

原画展と同じ長野で交流会にも参加しました。

舘野先生ご本人と散策して、発見したモノを持ち帰り絵を描く会でした。

同じ道を歩いていても、自然に対する知識と観察眼が違って色んなものを発見します。

川や田んぼ沿いを散策…ですが、11月であいにくの雨模様。
子供は寒さにぐずりつつ、何とか花を摘んで戻りました。

子どもがまず絵を描いて、その後に舘野先生が同じ題材をみながら横に描いてくださいました。

左が摘んできた花、真ん中が子どもの絵、右が舘野先生の絵

この交流会では、描く前の『観察』がとても大事というお話が印象に残っています。

目の前のものを、ただ写すのでしたら写真でいいかもしれません。

参考に摘んだ草花はしおれていきますし、見本にした昆虫の標本も、実際に生きている虫とは動きや色や輝きが違います。

生き生きと描くというのは、詳細な観察を通して色や骨格など「こうあるだろうな、こう動くだろうな」ということを体得しないと描けないのだと学びました。

作者のフィルターを通した『絵』という、新たな世界の構築をするには、観察から自分の頭の中に思い描いたものを自由に動かし表現できるということなのでしょうか。

私も子どもの横で、標本を見ながらこっそり描いてみましたが、ただ写すだけでも難しいものですね。

当日はスズメバチの標本を見ながら描いてみました
やはり生きているようには描けないです。

子どもも元々絵を描くのは好きだったのですが、より熱心に集中して描くようになりました。
園でも熱心に描くので、つられて他の子も丁寧に描くようになって助かると言われました(笑)

こどもねこ

お絵かき大好き!

当日は他のお子さんと遊ぶ方が楽しそうで、途中から絵をほっぽって遊んでいたのですが、何となく絵を描く雰囲気や言葉は「小さな芽」になって子どもの中に残ってくれたのかもしれません。

お子さんと一緒に絵本を読んで日常と結びつけたり、チャンスがあったらぜひ原画展や作家さんとの交流などの体験もしてみてくださいね。

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